飢えと骸とピアノ

飢えと骸とピアノ
蓋を閉じた生活の一瞬
惨めさの底にたどり着いた後に
彼女が作る音で
感情の蹈鞴が
一番低いところから
未経験な高みにフラップして
苦かった思いが
涙とともに吐出される
その感情の加速度の体験に
心奪われて
また
聴きたくなる
会いたくなる
そんなトリップ
彼女は言う、
ピアノを引き続ける原動力は
「飢え」だ、と。
枯渇と再生が
一千万の聴衆を作り、
数多の思い出を作る。
今日も一人の聴衆が
惨めさを自らまとい、
日々の生活をもがく。
彼が惨めさをまとうのは、
惨めさの先のトリップを望むから
彼も
飢えているのだ
そうして、
幾千万の骸の中に
屍が一つ増えた。

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