部屋

腐っていく大地に落ちた
一粒の種が
誰にも見向きもされず
土壌に飲み込まれていっても
世界の別の場所では
大空に手を広げて
影比べをする
子供の笑顔
海の底で眠る客船も
遠くの軌道を巡る探査機も
人が放つ矢の速度には敵わない
白い部屋の
中央に置かれた
机の上には
一輪の花が生けられている
多くの人は
そもそも
その部屋を知らず
当然、その花を知らない
けれども幾人かは
扉を開けて
その机の上の花が
生きていくための水を
代わり番こで注ぐ
一昼夜の両方を
同時にみつめて
一輪の花もまた
矢を放っている

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