智慧

堅牢な現実は
重たい扉に
封をされた
冷たく暗い牢獄
そこに囚われた
ひとつの生命は
その扉を力づくで
押開くことは出来ない
わずかに通ずる天は
手の届かない高さにあって
声を発しても
誰かからの返事はない
そういう境遇にあって
しかし、
彼は正気を保っていた
限界はあるが、無力ではない、
その智慧が
彼を支えた
彼は無論、
己の限界を知っている
しかし、
彼はまた
彼が無力でないことを
知っている
窓から差し込む
陽のひかりは
憤りではなく
希望であった
聞こえる鳥の歌は
妬みの対象でなく
祝福であった
彼に食事を届ける
見知らぬ誰かへの眼差しは
憎悪ではなく、
労いであった
彼は自分自身に、
私達は無力ではない
そう、言い聞かせることによって
自らを保ち
今日も
牢獄を破壊する手段を
模索する

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