愛着

ここにこうして
立っていると
体を通り抜けていく
風の音も
光の波も
きれいな鳥達の話し声も
これこそがこの世の真実に思えてくる
そういう気持ちの後に
そういったものが去っていて
残された無音と無明にふれると

感じられるもの
感じていること
そういうものは全て偽物に思えてくる
だから
本物の世界をもっと感じるため
一歩を踏み出し
どこまでも歩いていく
そういうつもりで
どんどんと
歩いて
うんうんと
歩いていると
いつしか年を取り
昔なじんだ友人達とは
冗談が通じなくなり、
故郷と呼んだところには
見知らぬ人達が
生きていた
そういうものをみて
悲しくなって
身につけていた
ぼろぼろのマントに
顔を埋める
知らない人に笑顔を見せながら
誰にも気づかれずに
心の中で泣く
その涙の理由は
己のほかには
過去の思い出に生きる人達にしか
分からない
そういう悲しさで
一昼夜を過ごした後に
そっと起きて
石畳の路地裏で
見知らぬ人達が
今日も生きていく営みを
準備していた
それをみた時に気づいたのは
私は
辺境に立っているのだということ
どこまで歩いても
何かを求めても
私がいる場所は
常に
辺境なのだということ
本物はいつもここにあって
いつも中途半端なのだということ
そういうことに気づいた私は
地面をける
足音に
誰かと交わす
おしゃべりに
きゅっとしまった野菜の手触りに
自分が
愛着を抱いていることを知った

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