キャタピラ

キャタピラを履いて
外に出かけたら
段差に到達する度
膝ががくがくするだろうか
あるいはそれ以前に
歩きづらいかも知れない

ロケットつきのジャケットを着て出かけたら
気心知れた人と肩を組むときに
邪魔になるだろうか
あるいはそれ以前に
重さに耐えきれず、
外に出かけられないかも知れない

それだけが心配だ

あるラーメン

モチっとしていて
噛んだ瞬間に
ぷりんと弾んで千切れる
そんな麵が
美味しい脂と
透き通った醤油ベースの
スープに浸かっている
中央には
食べる人への感謝を込めて
行儀よく、丁寧に折りたたまれた
ローストビーフのような
チャーシュー
主張せずに、
それでもただのオマケにならずに
きれいすぎる全体の見せかけを
彩って
アクセントになっている三つ葉も
シンメトリーを崩した
遊び心のあるメンマも
どこにでもあるものを
どこにもないものに
叩き上げた職人さんの誠意は
ご馳走様と発するのが
嬉しい一杯

記録と花火

 目を瞑ってからみえる光は
音が去っていったあとの静けさ
語る前に語られて
既にそこに在る真心の入れ物
拘りつづけたあとに
燃えかすが残っているのだろうか
そうではなくて、
土が蘇る経過なのだ
思い出と、
一緒に生きた記録と花火は、
私の原動力だし、
優しくあれれば、ならなければ、
という端緒である

特別

日常はさ、特別なものでしょう
という言葉は、確かに一理あるのだけれど、
それでは物足りない
こんなにも多くの人がいて
こんなにも可能性に満ちているのに
特別なことを望まずに
どうしていられよう
過去に起こった辛いことや大変なことを
忘れるわけにはいかないけれど
それを繰り返さないようにすることを
極めて堅実に
進めていけるはず
作っていけるはず
世界の誰も出会ったことがないものに
予定を立てて
会いにいけるはずなのに
強い光の
柔らかい断面積を求める

April Sky

強くて激しい気持ちや
言葉に疲れたら
マリンバの音
音楽の美しさが心を透る
また元気になれば
こわばった表情、
取り憑いた想いも
解けていく

今ここから

穏やかに暮らす人の隣で
居られることで手に入る
小さな福餅
アルファベットを
覚えて書いた
i love you
偶然に流れてきた
ラジオの響き
今ここから、
これからそこへいくことの
愛情や力強さ、
優しさ

日常的な所作として

心は言葉を満たす
そういう性質があるなら
素敵な言葉、
心を満たそう
“嘘”は良くないが、
“願い”なら良いかも知れない
くしゃくしゃになってしまった表情や
窮屈な険しい表情
それらが言葉で
作られるなら
美しい言葉で満たせば
ふっと、
蓋をすることはできまいか
澄んだ水が
竹に溜まって
かこんと、
鳴るように
解くことはできまいか
特別なことではなく
人が普通に行う
日常的な所作として

蛍光灯の下でも

光は重なって
温度を上げる
人も同じだろうか
一緒にいる人が
ふいにいなくなると
すっと、温度が
下がるような気がするのは
朝も昼も夜も
雨の日も
風の日も
雪の日も
誰かが働いていて
その人ごとの
大切な人のため
前提とされていること
当然とされていること
そういうところにも
宝物があって
ただ何もせずとも
輝いている
陽の下でも
蛍光灯の下でも

灯籠

水鏡にうつした風景を
放り込んで
濁ってしまうなら
隠された風景を
照らそう
誰も彼もみたことがないのに
嘘を食べて生きていると思うのなら
そこにある真実を
照らそう
知っている人はいない
だからといって
纔かな違和感がそこにないわけではない
少しずつ明らかにされていく様子で
現在に飲み込まれず
顔をちぎって分け与えた人のように
灯籠を片手に
照らして進む

いて

遠いところに
足を運びたくなるような人が住んでいて
毎日生活している
そういう風で良かったね
小さな時の全肯定を
持ち続けるということ
それは理想として
あるいは現在として
代わりでもなく
禊でもなく
許しでもなく
光と身体の温かさ